日記【26】
バイトが終わるのは16時から17時の間なのだが、
帰り道の、日が沈む空を見て思い出したことがある。
中学の美術の授業のことだった。
あたしは空を描いていた。
見て感じた通りに色を重ねていく。
主に水色とか雲の白とか、安直なものだったが。
一通り終わって違和感に気づく。
実際の空はこんな単純じゃなくて、もっと繊細だ。
目指す空は分かっているのに、それに至るまでの色が全くわからないのだ。
あたしは美術の、強面の先生に尋ねる。
「どうすればいいですかね。」
先生は、
「雲にピンク入れてみ。」
とだけ言った。
斜め上からの答えだったので、ピンクを入れるにしてもどのくらいの濃さとかどこからどこまでとか、考えて固まっていると、
横から先生が、こうだ、と言わんばかりにあたしの筆を取り、いろんな意味で浮いている雲にピンクを足していった。
それを見たとき、椅子に腰を下ろしたようにすとんと、納得した。
あたしたちの目に入ってくる色は、いろんな光が屈折して混ざり合って入ってきている。確か。
ただ青く見えるものも、赤があったり灰色があったりするんだろう。
ああ、あたしにはこの空は描けないなって、
当時は、少し面白く思った。